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20歳くらいの時だったか、
松村(チチ)と東京へ行ったことがある。 よりによって、ヒッチハイクで。 金がなかったということもあるのだが、 その当時、 新幹線というのは資本主義の手先の ブルジョアが乗るものだという意識があり、 髪を長く伸ばして音楽をやってる人間が、 魂を売り渡すようなことをしてはいけない。 そんなヒガミにも似た意見を松村にゴリ押しして、 ふたりで夏の暑い朝、 吹田か豊中のインター近くまで行き、 トラックを乗り継いで東京まで行った。 東京へ行った目的はというと、 これがまた情けないほどシンプルな話で、 渋谷の「ブラックホーク」という店へ行きたかったんである。 ちょうどロック喫茶というものが出だした頃で、 京都の「名なし」や大阪の「ディラン」「ビッグピンク」。 こっちにも、音楽を聴ける店がちらほらあったのだが、 当時、僕がよく聴いていた 渋めのシンガーソングライターのレコードは、 「ブラックホーク」が圧倒的な在庫量だという噂で、 こりゃ何としても行かないとな、と ヒッチハイクでふたりわざわざ出かけたんである。 でもその「ブラックホーク」で何を聴いたのか、 これがまた、まったく覚えていない。 5時間以上は店にいて、 レコードが掛かるたびに すぐジャケットを取りにゆき、 ふたりで熱心に眺めたような気はするのだが、 細かい記憶は見事なまでに飛んでいる。 そのあと 遠藤賢二がやってた「ワルツ」という店で、 ご飯がピラミッド型に盛られたカレーを食べた。 で、その夜は 高校の時に同級生だった奴のアパートに 泊めてもらうことにしていて、 泊めてもらうといっても、 ただこっちが勝手にそう思ってるだけで、 前もって連絡もアポも取っているわけはなく、 そんなもんだから、 そのアパートヘ行ってみたのだが、 案の定、もぬけの空で、 しかたなく近所の公園で夜を明かすことにした。 ふたりでベンチに横になっていると、 向こうから何だか見覚えのある奴が通りかかった。 名前も素性も知らないが、 京都で何度か話をしたことのある奴で、 向こうも僕を覚えていて、事情を話すと、 近くに住んでいるから泊まりにおいでという。 それで松村とふたり、そこへ泊めてもらった。 無謀が連れてくる悪運といえばいいか、 まあ、こういう奇跡的な偶然が いまだに信じられないほど多かった。 若い頃は。 次の日は松村は大阪へ帰るといい、 僕は東北へ向うことにしたので、 道路の反対側に別れて、 お互いまたヒッチハイクを決行した。 まるで映画のような東京ラストデーであった。 松村はもうすっかり忘れているかもしれないが、 僕はこの東京行きのことをなぜか覚えている。 何も準備せず、何も決めず、何も計画せず。 本当に場当たり的に、とにかく、動く。 僕を含めて、その頃の髪の長い、 世をすねて幻想を抱いているような連中は、 いまどきの若い女の子からすれば バッカじゃないの、と言われそうなことばかりしていた。 ケータイやメールが嫌いだったり、準備を怠ったり、 いまもどこかに、その行動スタイルのかけらが、 糸くずの熱のように僕の中に残っている。 褒められたことであるかどうかは別にして。
by hobodai
| 2009-06-18 16:56
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